2300万年前から繁栄し始めた僕達。
地球を「間借り」したに過ぎない人間は、
いつも主題として不完全な存在だという事を思い知らされる。

それに比べ、昆虫には余念がない。
写真としてどこを切り取っても、自然の背景によく馴染む。
そんな昆虫、生き物たちに僕は尊敬を超えた畏敬の念を抱くばかりだ。
大きな耳にも見えるこの触角は、
彼らが夜の使者であることを物語っている。
ノンネマイマイ:日本
「デザイン」と呼ぶにはあまりにも精巧で、
繊細なその巨体。体現されていたのは、
自然が永い年月が創り出した歴史だった。
シンジュサン:日本
日光のもと翅をひろげ、
蝶と同じく一日を終える。
陰と陽の境界線に、彼らはいる。
カストニアガの一種:エクアドル
色づく木の葉。
熱を帯びる一つの魂。
二つの眼は、闇夜に落ちていく。
ヒメヤママユ:日本
彼らにとって太陽の光を浴びることは、
地球と一つになることを
意味するのかもしれない。
ウラニアツバメガ:ペルー
白く毛深いからだには、
次の命が宿っている。
セダカシャチホコ:日本
真昼の森に大きな影。
夜までは待ちきれないと、
背中が語ってくれた気がしたのだ。
Black witch moth:ペルー
僕らは忘れがちだ。
まだまだ不完全な僕らを支えてくれているのは、
4億8千万年前から地球で生きている昆虫だということを。
『蝶』と呼ばれる種類はきらびやかで、『蛾』は地味で気持ち悪い、
そんな固定概念を持つ大人も少なくない。
しかし蝶と蛾の境界線はとても曖昧だ。
昼間飛ぶ蛾もいれば、地味な蝶もいる。
翅の表と裏で全く違った印象を受けるものもいる。
僕はいつも彼らを通して表を裏とし、裏を表と読む。
蝶と蛾は、昆虫と人間が表裏一体である事を感じさせてくれるのだ。
一体人間と昆虫は、どちらが表で、裏なのだろうか?
それは人間の僕にとって、一生を懸けた問いになる事だろう。
死してなお、輝きを放つ眼状紋。
流れる大地の鼓動に
僕を引き摺り込んでいく。
フクロウチョウ属の一種:エクアドル
色鮮やかな模様で捕食者を欺く。
それは樹海で怪しく踊る、
ピエロのようだった。
左マダラチョウ科 右ドクチョウ亜科:ペルー
鳥糞は脆いからだを支えうるのか。
命潤うこどもの数を、
霧が知る事はない。
ツマジロスカシマダラ:エクアドル
ミヤマキンポウゲの群落に
少しばかり身を置いて、
僕は少しの間、森と一つになっていた。
スジグロシロチョウ:日本
小さな身体と、艶やかな口吻を震わせ、
蜜を吸う姿。
大きな目から『生』を感じずにはいられなかった。
セセリチョウの仲間:日本
森の中まで届いた輝きは、
無駄なく生命の礎となって、
羽ばたく者に力を授けた。
Malachite butterfly:ペルー
月の姿が密林に吸い込まれたとき、
最期の脈を打った青い灯火が、
そこにはあった。
ペレイデスモルフォ:コスタリカ

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